『MAD MANレポート Vol.60』広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く(DI.ニューヨーク発行)

<2019年11月、Vol. 60>

●ユニクロは店舗を増やしているか減らしているか
<データの概念 CCPA特集>
●CCPAとGDPRの違いを探すよりも重要なこと
  この時点で先回りをする視点を徹底解説
米国企業経営者が考える「企業のパーパス」に大変化
●(余談)「軽いデータと重いデータ」の区分の再考
●静かに進むCCPAガイドラインを超えるエリート産業 CCPA規範の例外データとは
●CCPAの本来の意義を把握し覚えやすく分解する
●落ち着いてCCPAに対処するデジタル広告業界


CCPAとGDPRの違いを探すよりも重要なこと、この時点で先回りをする視点を徹底解説

「CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法:California Consumer Privacy Act)とGDPR(EU一般データ保護規則: General Data Protection Regulation)のコンプライアンスは似て非なるもの」あるいは「CCPAの方がGDPRより厳しい」等のかなり大雑把な理解が日本では「翻訳」として出回ってきた。さらにその翻訳の「説明情報」や説明文が正しさを優先するあまり、専門家による「なんだか理解しにくい」文章が溢れている。

 この部分をMAD MANレポートでは「CCPAから気づく視点」を強調してご紹介したい。精度は法務担当にお任せにして、経営判断用の「わかりやすい解釈」と議論に埋もれて「見落としている視点」を紹介する。

2020年1月から施行されるCCPAに「合わせる」という対応は、読者各企業の日々の業務として、実は「その対応で良いのですか」という議論がされていないようだ。あたかも「罰金を払わないで済めば良い」という逃げの行動である可能性は無いだろうか。企業行動の本来の理想を考える序章が下記だ。

 

■CCPAとGDPRの違いを把握することに重きを置かず「共通する流れ」を把握すること

少し裾野の状況からの説明になるが、MAD MANレポートでは常に「アメリカと日本の違い(Difference)を見つけ、固有の事情を把握しようとしてもしょうがない」という見解で、「だから何が可能か(Possibility)」を示唆している。時々、欧米事情を日本市場にご紹介する際に「日本との違い」を発見したがる日本人を見受ける。「欧米ではそうかも知れないけれど日本では・・・」と述べる立ち位置だ。重箱の隅をつついて「違い」を定義して自分の立ち位置を確保するよりも、全体の動きを把握してなおかつそれに飛び乗ること(あるいは排除すること)が価値を生む、という考えだ。「What(違い)」を見つけるのではなく「Why(事象のコア)and Action(で、どうするか)」を共に考えたい。

・例えば「高速道路での車の運転中に隣のドライバーと自分の違い」を探してもしょうがないという事には納得できるだろう。隣のドライバーと比較して何かの違いを見つける事よりも、隣のドライバーの動きを把握して高速道路を乗り切る(走る)事がスムーズな運転や安全運転につながる。

・例えば「彼女(あるいは、彼氏や妻帯者や)と自分との違い」を探してもしょうがない。この場合ならば「彼女の動き(を起こしている元の考え)」を把握して、どのように協調していくかを模索して行動するだろう。パートナーとはゼロサムではない、総和の価値が作る気構えでありたい。

・例えば、目の前に危険が迫っているならばその動きを把握して避けることだ。史上最大規模の台風迫っていて、その台風が過去の台風と数値の違いに感心しているだけでなく、常に自分の(自社の)舵取りをどうするかの判断をして行動する。そのためには相手の「動き」の把握に努め「違い」の発見に安住しない事だ。

 

■CCPA/GDPRの真意が、社会のデータ・ビジネスを反転させている動き

「良き企業市民・社会貢献」等のコトバは古くから存在し、企業PRや企業ブランディングの立場から、良き企業市民たることが「施策」として語られがちであった。CCPAやGDPRのガイドライン」が登場して以来、この「施策」がデジタル・コンテンツ上にて「POPアップ」スクリーンとして登場するようになり、同意を取る「実装手配」「CMP(Consent Man
agement Platform)」の導入が頻発する。これが「同意を取る」という形式的な「略奪行為」である事にはまだ企業としても実感がなく、「法務部的にクリアだから良し」としているのではないか。

 

■許諾さえあればゼロパーティ・データなのか

社内に転がる有象無象の過去のファーストパーティ・データに対してその危険性を知らせるべく、アメリカの調査会社のForrester Researchが提唱したのは、サード(外部データ)→セカンド(パートナーのデータ)→ファースト(自社のデータ)の概念を超える「ゼロパーティ・データ」と言う概念を発表している。

図1:Forresterによるゼロパーティ・データの概念の発表出所:https://www.forrester.com

これまでのユーザーデータの入手にあたって、ユーザーからの許諾の取り方とは「企業の利益を最大化させ、スケール化させる」ことを大前提としている作法だった。

例)WEBサイト管理者が法規に全く対応せずに、無許可で閲覧視聴者からクッキー情報を搾取しているようなケース

例)デフォルトで許諾合意が取りやすいように「オプトアウト」の手間を課す事で許諾を取る設定

上記のような状況が「悪質だろう」「アウトだろう」という判断までは、基準値が上がったのは喜ばしいとしても、未だに図3のように内容を把握してオプトインをするには、「申込書を取り寄せる」という手間を課している。暗黙の同意が「緑色ボタン(上)=心理的に正解」という誘いで、本来確認したい事項の内容が「白いボタン(下)」になっている背後の心理は、企業道理としてどのように考えるか。

図2:オプトインによる個人のデータ利用の同意を承認させるボタン出所:https://www.jreast.co.jp
「オプトイン」を同意として取るボタンを押させるのだが、
絶対に読まれもしないような硬い文章を羅列した最後の最後に同意のボタンを設定」

例)これ見よがしに法的な注意書きをWEBサイトのPOP-UP上に並べ、一瞬でも次の行動に移った場合は「同意したものとみなす」と言う「みなしの同意」の手法

図4:オプトインによる個人のデータ利用の同意を承認させるボタン出所:https://japan.zdnet.com

「これ以降ページを遷移した場合」の「遷移※」という漢字は、読めるのか、意味がわかるのか、この言葉遣いに恐怖を感じないか。さらにその意味がわからない事をした場合に「同意したことになります」というのは、サラ金の窓口ですら言わないようなか脅迫的な注意書きではないか。

図5:タクシー乗車した時の画面

出所:筆者撮影

目の前の画面に現れた上記の日本語にも驚いたが、その内容を改めて読み込むとかなりの「怖い」在り方が見えるがそれで良いのか。

>このタブレットは、フロントカメラによる画面像識別によってお客様の性別を推定し、最適なコンテンツを配信しています。

・座った瞬間から、カメラにてのぞき見していること
→それはタクシー会社として良いのか。インストールしているアドテク企業として
良いのか。放映している広告主は良いのか。

・カメラ映像からわたしの性別を(勝手に)推定していること
→用途や許可もなく勝手な撮影をして推定して楽しむのはヨロシイのか。

・その推定した性別を元に「適切なコンテンツ」を選び配信していること(適切とは何か)
 →例えば女性と判断して女性に適切なコンテンツ出すと仮定して、
それは「十把一絡げ」の偏見でプロファイリングを行っているのではないか。
(例えば、女性=育児・化粧品 等)

>性別の推定は乗車後初回の広告放映時のみに行い、画像データは推定後即座に破棄をしており、タブレットにもサーバーにも一切記録しておりません。
→撮影と性別推定を乗客の許可なく行なった上で、企業側の好みで判断した後に「破棄する」主体を名乗らず(この文章の主語は誰で誰が破棄するのか)「記録はしていません」は嘘くさくないか。

>顔画像識別を無効にされたい場合は、この画面左下にあります「画面OFF」ボタンをタップして広告放映をお止めください。
→極めつけがこの部分。例えば雨の日に傘も荷物も一緒にとにかく乗り込んだ場合、画面に意識することもなくタクシーに乗った瞬間から自動的に顔画像を認識されている。顔認識を止めさせる(オプトアウト)の方法論は紹介せず「広告ループを止める」事を説明している(顔認識を止める方法は、書いていない)。

これらの「だましの同意」や「みなしの同意」「不親切な同意」を通じて「許諾が取れているファーストパーティ・データ」と呼んでいるものが、現在の日本の(社内に転がっている)ファーストパーティ・データの現状だろう。本章で課題提示しているのは、その「取得過程での表現方法」を改める事に留まらず、その根底にある「勝手に奪って最大化させる営利のマインド」の再考をする事だ。

「ファーストパーティ・データを利活用しよう!」あるいは「使えるファーストパーティ・データを集めなおそう!」という手段から出発するのではなく、人間として人としての気持ちに気づき、現在は生活者が起点となってCCPAやGDPRのムーブメントになっている「事象に対するなぜ」に気づかぬ限り言葉遊びの連続になる。

 

■言葉遊びの連続の例

正しい文章を法定でかわすために、法的に羅列をすればそれで消費者のためなのか。おそらく企業として、その姿勢やあり方を変えるのに促されるようなインセンティブに気づけないために、企業トップも法務部も今後も意味のない呪文やお馴染みの言葉をコピー&ペーストして繰り返している状態だ。火星目線では実感が湧かず、移住の必要性を感じないという所だろう。しかし確実に「地球危機」は迫っている。AppleやMicrosoftを筆頭として、 Amazonでさえがこの・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.60にて

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