『MAD MANレポート Vol.54』広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く(DI.ニューヨーク発行)

<2019年5月、Vol. 54>

●「ファーストパーティー・データ」の誤解を解く
●それは重みのあるデータか、軽いデータか、再考
●Amazonから遅れをとる「ディストリビューション」の概念
●「テレビ」という単語が含む機会損失
●Amazonリアル店舗の目、「Amazon GO」がニューヨークに開店。顔認証の合意とは

<関連テーマをレビューする>
●「Amazonによるリアルの目」(2018年10月号)
●続々と登場する「無人レジ」スタートアップと「Amazon GO」の狙いの違い(2018年9月号)
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●携帯キャリアの持つユーザー・データは、有効な1stパーティ・データなのか(2019年1月号) 


 

「ファーストパーティー・データ」の誤解を解く

「ファーストパーティー・データ」この言葉が、ようやく「新語」「ブーム」かのごとく、各広告主や各エージェンシーが使い始めたのを見受ける。

ところが現在の日本での理解のされ方は、現在欧米で注目されているファーストパーティー・データの「本来の狭義での意味合い」を勘違いした使い方で終わっている。日本での理解は「自社内に存在するデータ全て」とか「第三者(サードパーティー)や社外から調達・購買するデータと区別する、それ以外の社内データ」という広義の意味合いのファーストパーティーだ。社内の何でもデータでは「インハウス」における活用に向けた、行動目的も定められない。

 

■過去の地球上のデータか、未来の火星のデータか

肝心なのは狭義の「ファーストパーティーのデータ」に気づく事である。これをMAD MAN レポートでは「過去の地球上のデータではなく、未来の火星人のデータ」に気づく事と表現している。現在社内に転がって放置されているデータの整備や、あるいは縦割りのサイロの中で存在して横断的に使われていないデータ等は、広義でのファーストパーティーのデータだ。現在注目されている狭義でのファーストパーティーのデータの将来性とは区別して考えた方が理解や施策の近道だろう。

その意味で「社内に転がっていたデータ」のことを「過去の地球上のデータ」と呼称してみた。それに対して顧客との新しい関係作りとして「移住先の火星の人々のことを知り、インタビューを重ねて、一つ一つ理解したものを各個人のIDごとに積み上げていく」という作業がファーストパーティー・データの構築だ。平たく言えば「CDP上のデータですか」と聞かれることもあるが、ほぼそれで正解としている。この個人のカルテとも呼べるデータのことを「個人情報データ」という呼称で読み上げると、社会的に風当たりが強い。よってこれを「(新)ファーストパーティー・データ」という新語で呼んでいるのであり、その真意に気づいておきたい。

 

■データ利用の目的と、許可を取る関係が入り口

過去の地球上から無作為に集まった社内に転がっているデータは、現在の商流に活用出来ても、未来の移住先の火星人とのファーストパーティー・データとして成り立つデータではなく、ほとんどが使えないデータである。なぜならばデータのほとんどが、消費者個人からの使用目的に対する同意(許可)を抜きにして企業が集めたデータだからだ(一部すでに許可済みで得たデータも存在するが、混同してしまう元なので本章では排除する)。

ファーストパーティー・データの第一条件として「消費者本人のデータを企業側が共有していることを、消費者自身が自覚していて、その利用目的と共有メリットに関して消費者と企業側が同意できている状態」、これを「火星人との新しい関係」と表現している。

過去の地球上でのデータは、企業側が匿名暗号化されたデータから推量をして、勝手に消費者を攻撃するかのごとく広告を表示したり提案の商品を見せたりしていた。これは移住先の火星ではルール違反であり、GDPR以降はガイドラインとして「禁止事項への対策」としての理解は進んできた。

これらの防衛対策としての「やってはいけない行動」が表面化して、最近頻繁に目につくようになってきたのが、ウェブサイト上でパブリッシャーがトラッキングの許可を求めてくるポップアップバナーだ。さらにこれがエスカレートしてファーストパーティー・データを新規に集める事に気づいたパブリッシャーが、「メールマガジン」や「調査レポートのダウンロード」をお勧めし、「お名前とメアドを登録してください」とばかりにポップアップ画面が頻繁に登場するのも感じるところだろう。やり方としては美しくはないが、これがファーストパーティー・データ構築に向けた、新しい同意データ集めの第一歩の事例には違いない。

 

■夫婦間の誕生日プレゼントのファーストパーティー・データは積み上がっているか

次に夫婦家族の中でのお誕生日プレゼントに関する「(狭義の)ファーストパーティー・データ」の例を考えてみよう。共に暮らしている夫婦間同士で夫が妻の誕生日に何かプレゼントするとした場合、果たして夫は自身の中に妻のファーストパーティー・データを積み上げているかどうか、と考えてみると分かりやすい。

「妻は女性だからお花を送れば良いだろう」と推量するのは、世の中の風習=サードパーティーのデータしか持っていない事になる。サードパーティーの風習データを用いれば、妻に「男の子の子ども向けのおもちゃ」を買ってくるよりは、お花の方が喜ぶケース確率は高いだろう。しかしこれでは夫はファーストパーティー・データの積み上げを持っているとは言えない。

あるいは過去にもお花を買ってプレゼントした過去のログがあり、妻に「ありがとう」と言われた経験があったとしよう。これも「今回の誕生日プレゼント」に関するファーストパーティー・データの利用とは呼べない。この情報は「利用を前提としていない過去データである」事がネックになる。「今回の」誕生日にプレゼントするという前提に、妻の同意の上で構築したデータではないからだ。例えば「前回の」お花を喜んでいた様子を勝手に悟り、今回は十万円分買ってきたとする。妻にとってみれば「なんだ、十万円も使ってくれるんだったら〇〇が欲しかったのに」ということが発生する。

このように「妻=お花」とサードパーティーで推量してしまうのは論外としても、「過去に妻がお花で喜んだから」と過去の無許可データもまた、ファーストパーティー・データと呼べない。さらに「誕生日にプレゼントする」というサービスを、妻が同意していないと、妻の過去の行動が今回の意向データとしては価値がない事が理解できるだろう。良かれと思って夫側のエゴで「プレゼントを当日まで黙っておいて、サプライズで妻を喜ばせる」という行為は、ファーストパーティー・データの契約の違反に繋がる。過去の地球上で行われたマーケティングや広告活動の大半が、この「推量」による無許可で気持ちの悪いサプライズ方式であった。

サプライズの押し付けではなく・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.54にて

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