『MAD MANレポート Vol.58』広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く(DI.ニューヨーク発行)

<2019年9月、Vol. 58>

・日本のメディアが触れない企業事情
 MITメディアラボの教訓から、日本企業の「お墨付き」デジタル投資の解消へ

・CPG販売における小売店舗の衰退の原因はAmazonにあらず、経済インパクトの大きさ

・「データドリブン」「データの利活用」の処方


 

CPG販売における小売店舗の衰退の原因はAmazonにあらず、経済インパクトの大きさ

 

■続々と加速するリアル店舗業の閉鎖と破産

2019年8月に米国ファストファッションのForever21もついに破産法の申請が秒読みと報じられた。これで倒産した店舗型の流通企業はSears・Toys“R”US・Lord & Taylor・Dean & Deluca・Barneys New York・Radio Shackと、映画にも登場したり日本にも店舗がある程の超有名店舗が続々と破産に至る。破産企業だけではなくGap・Lowe’s・Abercrombie & Fitch・Zara等の「生き延び組」も店舗の大幅閉店が進む。

 

図1:2019年4月時点での有名百貨店・小売流通業Walmart・Macy’s・J.C. Penny・Searsの株価推移と比較。

出所:Charles Schwabサイトより作成
この後Searsは破産申告をして上場リストから除外。2019年4月以降はJ.C. Penny、Mayc’s共に更に半額となり、
Walmartはさらに10%上昇させている

 

この米国の状況を日本では下記のように報道している:
引用・出典:日本経済新聞2019年9月23日
「米小売店、3年で1万店減 アマゾン・エフェクト猛威」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50103920S9A920C1MM8000/

米アマゾン・ドット・コムが既存の小売業を脅かす「アマゾン・エフェクト」が猛威を振るっている。米小売り大手のシアーズ・ホールディングスなど名門企業の経営破綻が相次ぎ、米国で閉鎖した店舗数から開店した店舗数を差し引いた純減数は2017年以降で計約1万店となった。米国で2018年に閉鎖した店舗の面積が最高を更新し、さらに勢いを増す。

ネット通販の普及が一段と進むとされる日本でも小売業が対応を迫られる。

 

図2:アメリカの小売店舗の閉鎖面積とNY株価の推移

出所:日本経済新聞社

米メディアは2019年8月、ファストファッション大手のフォーエバー21が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請を検討中と報じた。ニューヨークの旗艦店を9月中旬に訪れるとエスカレーターは故障中。店内の親子連れは「欲しいものがない」と話した。

日本経済新聞の記事中では「Amazonエフェクト」と称して、一貫して「Amazon対その他の小売業」という図式で紹介されている。「Amazonエフェクト」のキャッチワードは、これらのリアル店舗が消えゆく現象の原因を「Amazonが悪い」と片付けてしまい、一層日本の流通業とCPG業に「錯覚」をもたらす。悪化が先発している米国でのリアル店舗の減少は、Amazon一社がリアル店舗の事業シェアを食っているのではなく、そもそもの「環境の変化」と「その核」が別にある。

リアルの店舗ビジネスが破産したり閉鎖の数が増えている原因の核は、「巳(おのれ)自身である。具体的に言えば、これまでのリアル店舗のチェーン企業は、「自社」を起点にした顧客無視の押し付け商売を継続していたからに過ぎない。「お客様が大切」「顧客体験」などと掲げながらも、顧客が来店してくれる=トラフィック/インプレッションを大前提とした、一網打尽のマス・マーケティングで居残っていた事が要因だ。「店舗が存在する→顧客は来店する→売上があがる」を期待する、いわば殿様ビジネスのモデルである。顧客との関係づくりを怠っていた事がシンプルな不振の最大要素だ。

 

■大量生産の昭和の時代が本来の顧客起点を忘れさせてしまった

本来の顧客起点のサービスは、日本でも昔から存在していた。たとえば三越の前身である「越後屋」は、取引先の勝手口に訪問する「外商」がサービス手法の中心だった。MAD MANレポートではこの「外商」の様子を「サザエさんに登場する三河屋のサブちゃんの行動を見習え」と例えている。

三河屋のサブちゃんは、磯野家の「醤油がなくなりそうな頃」を感覚的にデータとして認知し、そのために勝手口に出入りする事を許可されている(オプトイン)。そしてサザエさんからの「そういえばそろそろお醤油がなくなりそうね」というファーストパーティ・データを顧客の同意のもとに聞き出し、「了解です。即お届けします!」という「リアクション(re-action)」がビジネスモデルである。
※「re」は受け身を表す。対語の能動動作は「pro-action」。

気づいておきたいのは、そのサブちゃんは「顧客との双方向の関係づくり」が性分で、好き好んでの行動である事。その延長で「ワカメの算数の宿題」すら手伝ってあげる程の、磯野家へのアシスト・奉仕度合いであることだ。ファーストパーティ・データを預けられる信用があってのコンシエルジュサービスである。

 

■Amazonは「サブちゃんモデル」をテクノロジーで具現化

確かにAmazonは御用聞きのごとく、ユーザー側が主体・主役とする「Amazonへの検索やリクエスト」が起点となっている。Amazon側は「受け身」で、これらのリクエストを「了解、即お届けします」というビジネスモデルだ。その端末としてAmazon Echo(アレクサ)が試されている。

旧来の「マーケティング・リサーチ」を起点とした「(地球型の)マーケティング」とは企業側が、本人が見知らぬ間に集計された生活者の行動データを「推量」で「先読みする」ことを美学とし、その「占いの的中率」のパーセントの効率を1%でも引き上げることを喜びとし、それを拡大推量して数を稼いでいた。

これに対して前出のサブちゃんに例える喜びとは、「磯野家と仲良くすること。何ならワカメの算数を見てあげることも異問わない。」ので、少し次元が違う様子が理解できるだろう。何もサブちゃんが偉いのではなく、そのモデルだけが商流でもないのは大前提だ。この例で思い出したいのは古くは越後屋の時代、あるいは120年前に通販を起点に立ち上がった「Sears」でさえが、実は共通する「顧客想い」が起点であった事。この一人ひとりの顧客への提供価値が、デジタル化によってリアル店舗で一網打尽を期待しない方向に回帰されたのだ。

 

■顧客起点への回帰。その一端がAmazon・その一端がDNVB

Amazonが巨大なサブちゃんならば、個別のサブちゃんとして無数に生まれているのがDNVB(デジタル・ネイティブなバーティカル特化ブランド)だ。

Unileverが買収した「Dollar Shave Club」やWalmartが買収した「BONOBOS」に代表されるDNVB群は、このサブちゃんのようなマインドを持つ事業・ビジネスの代表だ。事業者側(=主に起業側)が「サザエさんと仲良くなりたい」という想いを具現化したことが大きな「テコ」=起点になっている。日本に見られる「D2C」ビジネスが、新しい「商流」としての分類に括られるのに対して・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.58にて

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