『MAD MANレポート Vol.50』広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く(DI.ニューヨーク発行)

<2019年1月、Vol. 50>
●エージェンシー・ランキングの大変動と概念のシフト
 前篇:旧大手は、既存ブランドへのサービスに縛られ縮小均衡
 後篇: 新興エージェンシーは「ファーストパーティー・データ」へのフォーカス
●コンテンツ・ビジネスによる「紙芝居モデル」が広がる
●「コンマリ」が示す、Netflixが求む「ローカル・コンテンツ」の金鉱
●携帯キャリアの持つユーザー・データは、有効な1stパーティ・データなのか
●Walmart:投資はITインフラへ、そのマーケティングはタレントCMで


「コンマリ」が示す、Netflixが求む「ローカル・コンテンツ」の金鉱

SNS動画と一線を画す「プレミアムコンテンツ」と呼ばれる、制作シナリオを伴う「Full Episode Programming」を放映する筆頭がNetflixだ。Netflixが制作費を山積みして、より良い作品を作っている事は有名だが、彼らが自社で手がけられない作品として「ローカル(視点)のコンテンツ」が挙げられる。日本ではフジテレビが提携先だ。「ローカルな」価値あるコンテンツとは言語がローカルである事を指すものではない。これから「金鉱」となって注目されるコンテンツを日本の制作会社やテレビ局は逃している。

コンマリ

図1:2019年1月1日から始まった近藤麻理恵さんをメインにしたお掃除Before-After番組
「TIDYING UP with Marie Kondo」 出展:Netflix

やっと出た!これぞNetflixが日本に進出したからこそあり得るローカル・コンテンツ。「KonMari」こと近藤麻理恵さんによる「お掃除シリーズ」が、1月1日封切りで邦題「KonMari〜人生がときめく片づけの魔法〜」としてNetflixで上映を開始した(図1)。日本で生まれたコンテンツが日本では日本語スーパー付きで見られる。

原題:「Tidying Up With Marie Kondo」
https://www.netflix.com/title/80209379

この番組内容は、近藤さん自らが「見るからに散らかり放題の家庭を好んで訪問し、不用な物の見極め方や捨て方を伝え、たたみ方や片付け方のノウハウを通じて、あなたのライフスタイルを変えましょう」というシリーズ。「掃除」コンサルビジネスを本業とする近藤さんはNetflix放映前から、米国市場において向こう6ヶ月予約が取れない神コンサルタントになっている。
Season 1では8話がアップされており、すでに「イッキ見ファン(Binge Watching)」を作っている旬のコンテンツだ。Season 1としてタイトルされたエピソードは続編が予感される。

すでに「Marie Kondo」「Konmari」を伝えるYouTubeのビデオ群は、無数にアップされその合計は1億回以上の再生を誇る。しかも各ビデオは10分〜30分の長めの尺で、完全視聴(イッキ見)のファンが多い。

番組では近藤さんが片言の英語(日本の人には親近感ある発音!)と、訪問したアメリカの家では通訳付きで日本語で話す。主役は英語圏のアメリカ在宅の人たちであり、その家の散らかり具合のBefore-Afterが言葉を越えた「テレビ映え」を提供する。近藤さんのキャッチワード「Spark Joy!(ときめくモノかどうかで必要なものを見極めましょう)」は、米国でも別番組で取り上げられる程の人気用語になった(図1)。この番組開始以来、米国ではSNS上で「本まで捨てるのか」と炎上したり、「夫もSpark Joy!しないから捨てようか」等のパロディーが生まれたりしている。

 

制作者側から見た「ローカルコンテンツの価値」の見本

Netflixが日本に進出した時に、日本のテレビ局はNetflixを黒船扱いして恐れる中フジテレビが先手で提携を行った。フジテレビは「Netflixは日本人が日本語で楽しめるローカルコンテンツがまだまだ少ない」とばかりに、「日本人向け」のいつもの放映コンテンツをせっせと開発していた(2015年9月〜「テラスハウス」、「アンダーウェア」、「あいのり」等)。このフジテレビの単純な反応は、Netflixというプラットフォームが、日本というローカル市場を開設した意味あいを汲み取れていない。フジテレビはNetflixに提供するローカル制作のコンテンツの視聴者対象を、依然と「電波塔スカイツリーから届く範囲」に絞ったまま制作をしている。

フジテレビが「背水の陣」で望むべくは、Netflixの日本での契約者の拡販を助けるために、日本ウケする日本語コンテンツをせっせと作ることではない!と気づく事だ。フジテレビ(=ローカルコンテツ製作者)の活路とは、たとえばインドの洗濯好きの人の視聴数が増えたり、フランスのファッション関係者の視聴時間が伸びたりするコンテンツを開発し、Netflixを通じて世界に向けて打ち出す事である。日本ウケする内容を起点にしてそれを英語訳すればデキアガリ、では目的が全く異なる。

自国の売りたいものを発信するのではなく、世界多様な(ニッチの)人々から受け入れられる「逆引き」のコンテンツを開発する目線で、オーディエンスを獲得する事。非常に高度なこの目的への第一歩は、日本国内の広告主からの評価を一旦横に置いた番組制作に回帰できるかどうか(日本の視聴者のウケを横に置けるかどうか)。日本の広告主を収入源とする番組ではなく・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.50にて

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