広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く『MAD MANレポート Vol.48』(DI.ニューヨーク発行)

<2018年11月、Vol. 48>

●「広告フリークエンシー」をCFOが管理する危うさ その背景とは
  前編:フリークエンシーの相場、最適解を求めて
  後編:デジタル広告費のコスト効率化と企業経営の連動(再投資)
●Netflixが「保険」と「処方箋薬」をサブスク提供する日
●Amazonに追いつけないNIKE リアルとオンラインの顧客に対する哲学の差
  前編:NIKEが開店した五番街旗艦店が古く見える理由
  後編:Amazonに勝てないと考えるNIKEと協調できると考えるApple

 


「広告フリークエンシー」をCFOが管理する危うさ その背景とは 前編:フリークエンシーの相場、最適解を求めて

図1:Adageに登場した「フリークエンシー」の使い方を各企業が述べている取材記事。
出典:https://adage.com/article/cmo-strategy/frequency-advertisers-deal-conflicting-data/315496/

図1は、Adageが特集した「広告フリークエンシー」を経営目線からテーマにした取材報道である。広告フリークエンシーのコントロールをブランドセーフティ視点のみならず、コンテンツの「接触頻度」を企業資産と位置づけている。投資効率(ROI)にも寄与する重要な要素に昇格する様相だ。

世界最大のCPG企業である「P&G」のジョン・モラーCFO(Jon R. Moeller)が、10月の四半期IR説明会において企業経費抑制の一貫として、フリークエンシーの抑制に触れた。CMO立場ではなく、IRの場においてCFOが「広告の頻度」の概念を考慮・説明するというのは、マーケティング的には常套だが企業経営としては新しい。経営全体から見れば、これまでは「広告投下」としての回数の話に留まっていたが、デジタル起点での企業価値づくりにおいてフリークエンシーという指標が、「資産拡大」、「コスト抑制」を自動化で操作可能として使われ始めた、その夜明けである。

Adageの取材ではP&Gは今年、(おおざっぱに言って)「広告閲覧1人あたり月間3回以内」を目指すと公言している。これまでP&GはテレビCM〜デジタルまでクロスチャンネルにて、「月3〜4回」と公言していたのが、さらに減った数字だ。

図2:フリークエンシーの分布例。この図を把握せずに「平均フリークエンシー」という言葉は使えない。
出典:http://www.di-d.jp/wp-content/uploads/2018/02/cmarc_fq1-1.png

もともとデジタル広告運用の指標の中でもフリークエンシー指標は、うまくコントロールすれば無駄な広告表示回数を減らし、キャンペーン費用の削減やROIに寄与するものと理解されていた。しかしその最適値については「つかみどころが無い」上に、テレビCM時代における「平均フリークエンシー」という不確かな言葉が、企業の投資判断を煙に巻いていた。

定番「平均フリークエンシーの罠」
「平均フリークエンシー」という用語は、たとえば広告代理店の営業担当などが広告主に対して「今回のテレビスポットキャンペーンは〇〇〇GRPなので、リーチは◎◎%で平均フリークエンシーはX.x回です。」という形式で使われる。

広告に接触する一人あたりのフリークエンシーを棒グラフで図解すると(図2)、1回・2回・3回を頭にしてロングテールに尾っぽが伸びており、決して平均値を中心に正規分布(左右対称な釣り鐘状分布)に広がっている訳ではない。これは「平均」という言葉で全体を語るには、非常に向いていないばらつきだ。さらにテール部分(尾)の先には広告に「過多」な状態で接触しすぎている人が多く存在するという、尖った尾が存在する。

これだけではない。注意したいのは、この「平均フリークエンシー」とは広告に接触できた人だけを選んで数えた平均であり(図2の赤の棒だけの平均)、接触回数0の人を省いた数値である。このばらつきと計算方法における「平均フリークエンシー」という単語の罠は、広告業界内部でも理解の意識が薄く、大きな勘違いを起こすファクターである。

「最適な」フリークエンシーを求めて
上記のあいまいな「平均フリークエンシー」という概念を避けて、広告主は独自の努力によってターゲットに対して自社の「適正解」を求めていく。そのために使われる概念が、

・「最低有効フリークエンシー(認知され始める下限)」:minimum effective frequency (MEF)
を求めて、これを超える回数の広告を表示する。

・「最適フリークエンシー(費用を含めた広告効果が最大になる)」:optimum frequency
を求めて、近づけるように配慮し、

・かつ、「有効フリークエンシーの逓減点(効果が頭打ちになる。嫌われ出す)」:を超えない回数の広告を表示するように各企業、ブランドごとにストライクゾーンを研究していく

・さらにこれを、オーディエンス全体での最適値のみを求めるのではなく、「広告過多」の人を減らし、「広告過小」の人に仕向けたり、予算をフリークエンシーではなくリーチの獲得へ仕向ける「補正バランス」が必要とされる。

フリークエンシー最適解を求めて投資運用する
 「最適な広告表示回数は何回なのか。」 フリークエンシー解釈には、古くて永遠の課題が存在し、各企業・ブランドごとで最適解を求める様々な「変数」に挑戦していくことになる。フリークエンシーを左右する変数の代表的なもののおさらいとして、

・「広告目的(ブランディングなのか、販促なのか)」の基準
・「ブランド認知度(認知度があるブランドか、新商品ブランドか)」
・「サービス・商材カテゴリー(日常消費財なのか、高額自動車等のロイヤリティが高い商品か)」
・「ターゲットセグメントの特性や季節性(曜日、ボーナス時期、年末商戦、商品ライフサイクル等)」

等、想像にはたやすいが、幅広い変数が存在する。これにクリエイティブ要素を掛け算した無数の要素の調整だ。これらすべてが各企業側やブランド側独自の数値を左右する。「隣の企業の真似をしても始まらない」のがフリークエンシーという数値の特性である。

P&Gは「月3回以内」
 そんなフリークエンシーの不安定な要素をふまえP&Gがあえて発表する「広告閲覧1人あたり月間3回以内」の数値は、もちろん「隣の大手企業」の数値であり、どの会社にとっても鵜呑みも参考にもできない数値だ。例えば・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.48にて

 

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