広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く『MAD MANレポート Vol.45』(DI.ニューヨーク発行)

<2018年8月、Vol. 45>

  • 「グローバル広告ホールディングス企業」のビジネスモデル
     WPP, Omnicom, Dentsu らから見るエージェンシーの次の道
  • 眠りのショールーミング寝具の「Casper」による昼寝サロン
     「The Dreamery」から見る、リアル店鋪への偏重

  ★特集号
  世界で成長する「ライブコマース」
      米国市場で注目される企業と、米国に進出する中国企業について

 

 


眠りのショールーミング。寝具の「Casper」による昼寝サロン「The Dreamery」から見る、リアル店鋪への偏重

図 1:寝具サブスクの「Casper」が運営するお昼寝スペース「Dreamery」
https://dreamerybycasper.com/

ビジネスの世界における「タイムマネジメント」は誰しも関心のある需要ジャンルであり、そのマネジメントの中でも「睡眠」は大きな項目だ。寝具のECとして立ち上がったビジネスである「Casper」が、マンハッタンのSOHOエリアに自社製品マットレスのショールームを兼ねて「The Dreamery / ザ・ドリーマリー」の名前でパワー・ナップ(昼寝)の拠点を開設した。2018年7月にオープンしたスペースは、明らかにオンライン・ビジネスによる「ポップアップ・ストア」や「ショールーミグ」としてリアル拠点に進出した事例である。「45分、約2,800円(25ドル)」の昼寝スペースを提供して、「実用的・実利があるショールーム」として登録利用ファンを増やす目的だ。

MAD MAN読者も、きっと過去に百貨店やIKEAのベッド展示のコーナーで「思わずこのまま寝たくなった」経験は誰しも持っているだろう。Casperはオンライン起点であらかじめ登録を受け付けた上で、商品展示の個室(暗室)で「ガッツリ」眠りを実地体験してもらうサロンとして開業した。Casperが狙いたいポテンシャル顧客とのパイプ(名簿)をオンラインで取るために、眠りの体験を「(無料ではなく)有料で」提供するのは非常に新しい。有料で事前登録にて利用に来る顧客は、オンライン上の情報ですでに関心度の高いポテンシャルユーザーである。通行人(匿名)に向けて「誰でもどうぞ」と無料サンプリングするファネル・マーケティングに比べリーチ数こそ劣るが、一気に濃いい関係の名簿(パイプ)に転じる要素がある。

「ショールーミング」は、ECにとっての「エクストラ」コスト

この「寝具=Casper」によるマンハッタン一等地における「リアル・ショールーミング」事例が(デジタル)マーケティング上で特徴的なのは、リアルの「場所代」がどうしても「採算性(コスパ)」の第一因子として謎のままである事だ。リアル場所代の採算を度外視した「ショールーミング」をPR的な打ち上げ花火として駆使しつつ、実質は何人の「オンラインパイプ獲得」が取れるかのKPI説明は明示されにくい。単にオンライン起点ビジネスが「リアル店鋪」に逆流し、体感を提供する事のメリットだけを騒いでは、あまりにもコストを度外視した「トレンド取材」のままである。「リアルのどの部分が」オンライン事業にとって必要なのか(あるいは不要なのか)を細部に区切って考慮し、経営指針として区分をつけたい。

今や「オンライン/オフライン」という事業区分は存在せず、事業はすべてオンラインを軸に動くのは既知のこと。リアル店鋪はその「付属施策」の一つに過ぎないのだが、「不動産」という所有・賃貸の旧来の概念がいまだ強く残る資産は、オンライン上で成り立つ事を目的としたビジネスにとって、「先入観」コストが高くなる。オンライン起点のビジネスには、リアル拠点は「つい、手を出してしまう禁断の実」と思うぐらいの、「冷静になるための御札」のイメージを持っておいてよいだろう。

 

 

図 2:Casper のマットレス梱包の様子@Casper

ベッドのEC売りで完了するのではなく、繋がった顧客の情報を蓄積して接点面積を増やしている。例えばペットを飼っている事がわかればその誕生日ギフトを送るという具合だ。

Casperは2014年に創業してからすでに約264億円(約2.4億ドル)を調達し、初年度に1億円(100万ドル)だった売上から、これまで3年半で積み重ねた「累計」売上高は660億円(6億ドル)とされる。$500〜$900の格安単価を積み上げ、ここまでオフライン無しで成長できたCasperが、今さら自費でこの「体験」店鋪の設置が必要なのだろうか。直近のラウンドで約190億円(1.7億ドル)をCasperに投資してきた量販店「Target」のリアル店鋪を活用すれば良いのでは、と不思議に思える。

PR 施策マーケティングとして開設された「The Dreamery」は、その当初の PR 目的に・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.45にて

 

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