広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く『MAD MANレポート Vol.44』(DI.ニューヨーク発行)

<2018年7月、Vol. 44>

  • 日本の西友を売却する米Walmartの判断、「既存顧客の総入れ替え」
  • 広告インプレッション課金としてのIoTショールームに手を出して良いのか
    ★別紙レポート
    『数値と図で見る、コネクテッドTVのトレンド再考』
    『コネクテッドTVの延長にある「AT&TによるTime Warner吸収」の意味』

広告インプレッション課金としてのIoTショールームに手を出して良いのか

「b8ta」のショールーム

図1:マンハッタンのMacy’s本店に設置された「b8ta」のショールーム。筆者撮影

ECの浸透により数年前から、とくに家電やファッションを中心に「ショールーミング」が実店舗の「敵」扱いにされる風潮があった。消費者は実店舗でお目当ての商品の性能やサイズ、使い心地などをリアルで確認し、その店鋪で購買せずにオンライン上で購買を行う。現在の流通企業は、ショールーミングによって実店舗の売上が下がる事を懸念していた時期もあったが、実店舗と自社オンラインで売れるなら、販売額を「リアルとオンラインのトータル」で考える目線を持つ企業も登場した。しかしこれも結局、どこでも買えるコモディティーを販売していては、他社オンライン(Amazon等)で買われてしまうのが、リアル店鋪の行く末だった。

これに対して、DNVB(Digitally Native Vertical Brand)のような「店鋪はショールームとして見せるだけ、実購買はオンラインでどうぞ」と、最初からオンライン購買を前提とした「ショールーミングを期待する」ビジネスモデルも登場した。固有のブランドが、固有の流通網で顧客とつながるので、Amazonに客を取られる事もない。購買顧客はオンライン上での個人情報の登録を前提としているので、顧客との「パイプ」が作られるこのモデルは、今後共ニッチ(バーティカル)ブランドでは威力を増していく。

■ショールーミングを逆手に取る「広告モデルのIoT展示」のアイデア
さらにショールーミングを「むしろ、して欲しい」と願うスタートアップ企業達を「束ねる」積極モデルが登場してきた。図1はニューヨークのMacy’s本店の入り口すぐそばに設置された「b8ta(ベータ)」の展示模様だ。「b8ta」とは正式リリース前を意味する「β(ベータ)」をもじって社名とする、シリコンバレーのスタートアップ企業。

この企業のアイデアは、IoT機器(ガジェット)が展示できるスペースをIoT開発企業に割安で提供し、課金をする。IoTガジェット開発企業にとってのネックは、自社の「世の中がまだ見たことの無い新開発品」を人々に見て触ってもらい、体験認知してもらう事だ。しかし自社でショールーム設置を全国展開したり、自社で展示スペースを交渉したりのプロセスには費用と手間がかかる。b8taはこれらのIoT企業を束ねて「未来テクノロジー」をイメージさせる「IoT集合ショールーム」を作ってパッケージとして、顧客離れを起こしている百貨店等の流通スペースに「客寄せ」ネタとして提供するモデルだ。

2015年に立ち上がったb8taのショールーミング課金モデルは、展示製品の前に通行客が立つとカメラセンサーによってカウントが始まり、秒数単位でIoTガジェット開発企業に請求する「インプレッション課金の広告モデル」である。このパッケージを流通「チェーン店(ネットワーク)」と契約し全米に設置、スケールさせている。b8taのホームページの情報では、月間Impressionが600万回、月間ユニークビジターが7万人、としている。「広告」として成り立つ数字であるのがわかるだろう。製品の前に立ち止まるだけのインプレッションと、実際に製品に触れるなどのインタラクション(いわゆるコンバージョンの役目)での単価は区別され、計測・分析ソフトウエアを持ち、出展者(広告主)にフィードバックされる。

■Retail-as-a-service(リテール・アズ・ア・サービス)
このようにb8taは、客離れを起こす百貨店や流通企業のスペースに、無名の「未来IoT商品」を20−30点集合ショールームを開設させ、集合によって「タレント化」させ、スペースの魅力をもたらした。b8taが流通企業側に支払う原価の「スペース料」は、流通企業側の招聘したい動機も重なり格安で設置させてもらえる。「儲けの仕組み」としてはうまく出来ている。

IoTガジェット開発企業側は新商品を見せる(広告)インプレッション数が欲しいので、出店スペースを「購入」する。出店したIoT企業は、自宅に戻った閲覧顧客がオンラインで購買してくれればD2C顧客獲得と売上計上になる。その売上はb8taにコミッションを支払う必要もない。このようにb8taはリテール・スペースをマッチングで付加価値を付け、格安でサービスを提供するので、「Retail-as-a-Service」と自称している。ちなみに創業者はGoogleに買収された空調系IoTの先駆けである「Nest」出身の4人のチームだ。

■とびつく旧来の流通企業だが
このb8taのモデルに、ホーム用品の「LOWS」や百貨店の「Macy’s」はこぞって飛びつき、自社の実店舗スペースを提供している。「顧客のインストア経験」を高める戦略の一環としての名目だ。Macy’sは今年6月にはb8taに出資も行っている。まるで百貨店が「Apple Store」を誘致するかのごとく、ちょっとしたブームとなっている。日本でも「スマート・ショールーム」として目黒区の「&AND HOSTEL」がIoTルームを再現し、宿泊者だけではなく一般の人も体験できる施設を開設しているような例も増えている。

■実際の現場はどうか
しかし、実際の現場は「常にガラガラ」の状態である。まさか・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.44にて

 

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