広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く『MAD MANレポート Vol.42』(DI.ニューヨーク発行)

<2018年5月、Vol. 42>

  • 映画館をNetflix化させる「MoviePass」
    激化するサブスクリプション事業の「可能性」と「リスク」とは
  • ECサイトは「物販品の検索サイト」にあらず
  • TVCMに溶け込む「コネクテッドTV広告」の躍進
  • 「コネクテッドTV広告」本業のVideologyが破産申告をする背景
    営業手法の心機一転
  • The Trade Desk(TTD)のコネクテッドTVを先読みした経営
  • 「GDPR」が起点 「わたし」のデータ未来に期待されること

TVCMに溶け込む「コネクテッドTV広告」の躍進

図1:コネクテッドTV広告の露出先デバイスの例
Videologyより, https://videologygroup.com/

昨年までの米国における「テレビ広告」の話題の特徴的なキーワードは
・「プログラマティックに」
・「アドレサブルに」
・さらに「ブランドセーフティで」

であったのに対して今年はさらに、
・「(大画面で見る)TVコンテンツに」広告露出が可能な
・『コネクテッドTV(CTV)広告』

という要素が加わったインベントリーやマーケットプレイスの比率が目に見えて大きくなってきた。

これまでの風潮では「テレビは今やファーストスクリーンではなく、モバイル端末がファーストだ」という指摘もあったが、マーケター企業にとっては依然として「テレビ広告費」の存在と意義は大きい。この巨大予算を旧TVCMで消化してしまうのではなく「デジタル上で最適化」させるために「モバイル」や「マルチスクリーン」などデジタルへの予算配分を行う手法が登場している。今年の指摘はその配分先として、再び「テレビ画面」の比率が高まってきていることだ。家の中、くつろぎの「リビング」で生活者との関係性を構築するステップにおいて、「旧リネアTVCM」と区別される「コネクテッドTV広告」が画面に登場してきたことは大きな変化だ。むしろ、米国のマーケティング施策は「テレビ(画面)ファースト」へ意識が向いている。

■コネクテッドTV広告とは
「コネクテッドTV(CTV)」広告とは、文字通りネットに接続された大画面テレビで観るコンテンツに挿入される広告を指す。そのデバイス例としては「スマートTV」、「Xboxやブルーレイプレーヤー等のTV接続機器」、「Apple TV、Roku、Chromecast、Fire TV等」が挙げられる。それらのデバイスを経由するビデオコンテンツと連動する広告露出が、「コネクテッドTV(CTV)」広告だ(図1・表2)。この定義はあくまで広告主や配信側の名称であり、視聴者側は旧来のテレビ番組を視聴している限り「テレビ広告(TVCM)」なのか、テレビに接続されたデバイス経由で流れている「CTV広告」なのか、区別するのは難しい。

さらに米国では「Sling TV」、「DirecTV Now」、「Hulu with Live TV」、「YouTube TV」等の「vMVPD※」チャンネルを視聴するユーザーも着実に増えている。テレビのコードを切って(コードカッター)、前出のデバイス経由でOTT配信のコンテンツをテレビ(受像機)にて視聴する層が増加している。

これらvMVPD経由での広告リーチはコネクテッドTV広告の範疇であり、コードカッターが増えれば増えるほど、これらのサービスを通じて「コネクテッドTV」広告としてリーチできる比率が増える(Googleのウォールドガーデンである「YouTube TV」を除く)。MAD MANレポートでは半年前に「vMVPDの衝撃」として別冊特別レポートでお伝えしたが、今年はいよいよvMVPDを経由した広告枠の需要が、供給が追いつかないほど過熱しそうだ。(※virtual Multi Video Programming Distributorの略、OTT経由でテレビ番組を配信するTVチャンネルサービス)

米国ではこれらのコネクテッドTV(以降CTV)経由で広告がリーチできる世帯数は9,300万世帯に及び、米国の総TV世帯の1億1,960万世帯を分母にすれば、およそ8割に相当する(Oracle, Nielsen調べ)。広告主・配信側からするとリビングの大画面TVが「一つの窓」として集約され、その窓にリーチする映像ソースやルートが、旧来の「リネアTV局」経由で配信するTVCMに加えて、「OTT(Over-the-Top)放映局」経由と「CTVへの広告配信プラットフォーム」経由の選択肢が増えたことになる。いずれのルートでも挿入するコンテンツ(番組・チャンネル)が、ホワイトリストで確認できる「ブランドセーフティ」な広告枠として需要が高まる。

ネット接続ゲーム機 6,270万人 Roku 3,450万人
スマートTV 5,600万人 Apple TV 2,250万人
Chromecast 3,800万人 Blu-rayプレイヤー 2,900万人
Amazon Fire TV 3,610万人
表2:米国でのCTV接続ユーザー数(Videology資料より)

日本で例えればテレビ電波の「日テレ」のドラマを見ていない生活者でも、CTV経由で「Hulu(日テレ出資)」のアプリを立ち上げてドラマを見ている層が存在するのは理解できるだろう。米国ではこのような「CTV経由でコンテンツを見ているが、旧テレビ放映は見ない層」が41%存在する(The Trade Desk+Nielsen調べ)。

CTV広告として配信される「ビデオ広告」は、CTVとして接続しているテレビ画面の中の「アプリ」に向けて配信される。例えば、CTV端末を視ているユーザーが「Crackle※(図2)」などのアプリを開いて米ドラマ「となりのサインフェルド」を見ようとすると、ドラマが始まる前に15秒や30秒のビデオ広告が配信・再生される。(※ソニー傘下の動画アプリで、Chromecastでも利用可能)

図2:Android向け動画アプリのCrackle
Chromecastには標準装備

これは従来のデスクトップやスマホに配信される「プレロール広告」と技術的には同じだが、リビング内でのCTV大画面で見た場合のユーザーエクスペリエンスは、これまでの(リニアの)「TVCM」と区別がつかないだろう。VOD コンテンツ(ドラマ等の長尺コンテンツ)であれば、コンテンツ中の「ミッドロール」や「エンドロール」の自動配信で、CMの連続ストーリーを制御することさえ可能だ。(ここではVASTやVPAID等のビデオ配信の規格や技術の準備・条件については省略する。)

CTV広告はスポーツや音楽などのイベントの生放送などでは、むしろ旧TVCM以上の体験を作る可能性がある。仮にTV局がライブ放映をテレビ電波と共にCTV向けにネットに放映したとしよう。TV局側は「計画通り事前に組み込まれた」TVCMが順番通り放映されるだけだが、CTV側の同ライブ放送は「CM枠」に対して、リアルタイムにアドレサブルに動的に「差し替える」ことが可能になる。TVCMは万人向けコンテンツの順次配信だが、CTV広告はよりパーソナルで、リアルタイムな素材で、なおかつ過剰フリークエンシーを抑えつつ(キャップをかける)、ターゲットに届けられる。

米国でも2〜3年前から「理論上」CTV広告の扱いは存在したが、今年に入りTVアップフロントの交渉時期を待たずして実働が増え始めた。昨年の小さい出稿額に比べると100倍〜1,000倍の勢いで成長している。日本ではまず「在庫」の普及が待たれるところだが、自動車や飲料など特定のカテゴリーでは実験が進む時期に差し掛かっているはずだ。

■計測指標はTVCM方式か デジタルスクリーンとしてのCTV広告方式か
視聴者にとっては限りなく違いがわからないTVCMとCTV広告の差だが、広告主や配信側から見た「枠の売買ルート」と「露出の計測方式」の差にはまだまだ壁がある。

広告主やエージェンシーから見た広告枠の売買に関しては、「右にテレビ局を抱え」、「左にデジタル配信トレーディングデスクやDSPを抱えて」統合的に視聴者側が「リビングのCTV受像機」を見ているという体験をつくる作業だ。さらにその向こう側にはモバイルデバイス等との連動があるのは言うまでもない。

現在のところ、これらを「統合的に」行うにはテクノロジーによる自動化よりも属人的な経験則に基づく「合わせ技」が必要になる。例えば米国において、テレビ局を相手とする買い付け方の主流である「Nielsen視聴数のギャランティード」買い付けを、「Roku」が相手のCTV広告枠の買い付けにまでに当てはめるのか、という課題だ。

「広告露出の計測」においてはさらなる「TVCMとCTV広告との統合指標」が求められる。「CTV広告」ではデスクトップやスマホ同様にデジタルデバイスとしてのインプレッションを基本としたカウントが主流だ。「旧TVCM」の視聴計測とデジタルの指標の違いは周知の事実だが、これまでは「画面」が違うリンゴとオレンジの比較であった。ところが「コネクテッドTV」画面上では、旧TVCMとCTV広告で「まったく同じ(見分けがつかない)」視聴経験なのに指標が違うということになる。さらにリビングのCTV受像機はこれまでデジタルデバイスの特徴であった「One-to-One」のカウントだけでなく、複数視聴者(Co-Viewing)が存在しうる・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.42にて

 

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