広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く『MAD MANレポート Vol.36』(DI.ニューヨーク発行)

<2017 年 11月、Vol. 36>

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  • 米国の次期地上放送「ATSC 3.0」方式は地方局を救うのか
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米国の次期地上放送「ATSC 3.0」方式は地方局を救うのか

図1:世界のデジタル放映の規格国別採用図(欧州方式:DVB<青>、米国方式:ATSC<橙>、日本・南米方式:ISDB-T<緑>、中国方式:DTMB<紫>)
WIKIPEDIA COMMONS 「Digital broadcast standards.svg」, https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Digital_broadcast_standards.svg

現在、米国では「地デジ」の後継となる次世代テレビ方式、「ATSC 3.0」がにわかに前進し始めたので紹介する。「地デジ」は「デジタル」と名は付くが、決して「IPのネット上」に流れるコンテンツではなく、「テレビ」の世界と「ネット」のビデオ世界との間には「IPの壁」が存在している。新技術はこの壁が無くなり、例えれば「テレビがネットに」合わさる技術なのだ。

日本での「地デジ化」は2011年7月に完全移行された。それ以降は、テレコム企業が配信する「Wi-Fi※」経由の映像コンテンツ配信(OTT: Over-the-Top ケーブルや衛星のボックスの上を超える意味 NetflixやHuluを含む)に関心が移り、テレビ局の放送電波(OTA: Over-the-Air 空から降る電波の意味)によるビジネスの行き詰まりが感じられている。(※テレコム企業が使う電波の「Wi-Fi(規格) 」や「無線LAN」、「LTE/4G/5G」、「モバイル放送」等を一括りにしてここでは「Wi-Fi」と呼ぶことにする。)

現行の米国方式はATSC 1.0のOTA

米国の現行の「ATSC 1.0方式(Advanced Television Systems Committee)」は、欧州・アジア・アフリカ方式の「DVB-T」や、日本・南米方式の「ISDB-T」と並ぶ地上デジタル放送規格として、カナダ・メキシコ・韓国で導入されている(図1)。米国では、地上波であるNTSC方式時代から「地デジ」であるATSC 1.0には2009年に移行完了している、つまり米国は2011年に移行した日本より約2年ずつステップが進んでいると考えてよい。

そして米国では2013年頃からATSC 1.0方式から3.0への移行検討がゆっくりと進んでいた。それが突如今年4月のNABショー(全米放送機器コンベンション)の際に米国連邦通信委員会(FCC: Federal Communications Commission)の旗振りがアナウンスされて実働し始めたのだ。米国の方式変更には、日本・アジアの映像機器メーカーは敏感に反応するだろうし、日本政府もなびく可能性がある。実際ATSC 3.0の団体メンバーにはNHKも所属しており、スポンサーにはSONY、Panasonicを始めとした日本の家電メーカーが名を連ねている。

図2:韓国のATSC 3.0の実験デモ
ATSC 「FIRST END-TO-END 4K IP BROADCAST IN KOREA MARKS ANOTHER KEY MILESTONE FOR ATSC 3.0」, https://www.atsc.org/newsletter/first-end-to-end-4k-ip-broadcast-in-korea-marks-another-key-milestone-for-atsc-3-0/

日本はアナログ時代には米国と同じNTSC方式だったが、地デジのフォーマットとしては米国のATSCを採用せず、NHK独自のISDB-T方式を採用している。これに対し韓国は米国と同様のATSCを採用している(図2)。韓国チームは来年のピョンヤン冬季オリンピックに向けてこのATSC 3.0の試験運用を計画し、すでに今年2月から試験実施中だ。ADSC 3.0を受信できるデバイスをSamsungとLGのメーカーと組み、開発、販売(出荷)を開始している。これは米国よりも進んだ取り組みと言え、米国に取ってみればローカル実証試験となる。韓国は常に「自国方式」にこだわるよりも「大局を見て」グローバルでの成果を考えるお国柄が出ているとも思える。

ATSC 3.0の特徴

次世代方式のATSC 3.0の一番の特徴は、放送とネット(ブロードバンド)を組み合わせたIPベースの放送システムであることだ。「2.0」を超えて「3.0」と呼ぶのは、1.0時代とは互換性を持たない新しい方式だからだ。これによりATSC 3.0受信のチップを持つデバイス(スマホやタブレット、テレビ等)であれば、視聴者はどこでもIP放送が受信出来き、同時にネットに接続できるようになる。

このATSC 3.0方式はOTA(Over-the-Air: テレビの放送電波)であるので、現在のテレコム企業が有料課金するWi-Fi電波とコンテンツ配信で競合することになる。ATSC 3.0は車での高速移動においての受信も、へき地での受信も電波の乱れがほとんど無い。当然ながら高画質、高音質で、4K、Ultra HD、High Dynamic Range(HDR)の画質を伝送できて、マルチキャスト、多言語、Dolby AC-4の立体オーディオシステムが提供できる。緊急警報放送もプッシュ送信可能だ。

広告の領域も視聴個人に合わせたアドレサブルな広告配信が可能だ。さらにリアルタイムでの視聴率(視聴動向)を、調査会社を経由せず全数で知ることができる。ATSC 3.0を採用するというのは、コンテンツ放送局がケーブル配信や衛星配信やWi-Fiのテレコム企業の「パイプ」に頼らず直接デバイスに向けてターゲティング広告が発信できることを意味する。コンテンツ放送局にとっては、直接個人デバイスの視聴を把握することができる技術なので、マーケティング企業の中での「主役の座」をGoogleやテレコム企業から奪回するチャンスに繋がる。特に地方局にとっては自立生存に向けての夢のような技術となる(後述)。

一見このATSC 3.0次世代放送規格は・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.36にて

 

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