広告&マーケティング業界の最新トレンドを紐解く『MAD MANレポート Vol.32』(DI.ニューヨーク発行)

<2017年7月、Vol.32>

  • 今月のデータ:米国広告主ランキングの推移
  • アドネットワークを超えた、ブランド作りに寄与するAmazon
  • 和訳輸入記事サイトの記事の読みこなし方:DIGI DAY日本語版を通じ
    • Amazonが抱え込む販売データ。いら立ちを超えて同調するブランド企業の新戦法
    • Amazonのアドネットワーク機能を超えたブランディング機能
  • 消えたネットの中立性議論
  • YouTube TVが日本にも登場か。局、ブランド、その採算は
    • Google/YouTube TVはどこで採算を取るのか
  • 今月のデータ:米ケーブル回線契約の落ち込み度合いは

YouTube TVが日本にも登場か 局、ブランド、その採算は

図1:写真中央の女性が今年の★「サンバレー会議」に出席するYouTubeのスーザン・ウォシッキーCEO。左は★Twitter創業で現SquareのCEOであるジャック・ドーシー (出典:Zimbio.com)

7月8日付の日経新聞が『ユーチューブ、TVを丸ごと手の中に。CEOに聞く 動画同様いつでも視聴』の記事を掲載した。途端にニューヨークのMAD MAN宛への問い合わせ連絡が急増した。この1ヶ月前の6月2日にフォーブス日本語版が日経より先にYouTube のCEOの取材記事を掲載していたので、「後追い」で日経が追記紹介した形だった。日本では日経新聞に登場してはじめて日本の経営者の間でやっと(問い合わせの)話題になるという、日経新聞の未だ大きいインパクトに敬服する。
フォーブス記事:https://forbesjapan.com/articles/detail/16455

この日経とフォーブス記事で紹介された★YouTubeのウォシッキーCEOはシリコンバレーを超えてグローバルで「超」有名人であり、要人だ。そのキャッチコピーは「5児の母親(Googleで5回の産休を経て経営幹部に昇格)」、「Google16番目の社員」、「2006年のYouTubeの買収と、★2007年のダブルクリックの買収の主導者」、「姉のアン・ウォシッキーも★23andMe社を創業した起業家で、この姉は★Google創業者のセルゲイ・ブリンの元妻」、とその父母を含めてシリコンバレーでも血統書付きの有名人。Facebookの★シェリル・サンドバークCOO★IBMのジニ・ロメッティCEOらと共にテック系企業の「女性リーダー」の象徴であり、あこがれだ。

CEOトップが自ら、こうして日本語で記事露出しているのは「YouTube TV」の日本上陸が間近である事が想像つく。SNS世界におけるYouTubeは、2006年のGoogleが買収して以来、世界共通の「テクノロジー」として一斉に世界へ輸出した。それと比較して今度の「YouTube TV」の今後の世界展開は、日本でも他国でも各国のテレビ局と人的交渉と金銭交渉を伴って広げるAlphabet(Google)の総体力を使った「Google TV」としてのプロジェクトと認識した方が良い。今後の広がりは各国のテレビ局の「乗り方」次第だ。

Googleが★YouTubeを買収したのは10年前の2006年11月で、当時の買収評価額は★約2,000億円弱(16.5億ドル)だった。現在のAlphabet傘下のYouTube単体としての年間の推定総売上が約1兆3,000億円(約110億ドル)である。YouTubeの企業価値資産では約10兆円(約900億ドル)と試算する発表もある。ちなみに7月24日時点のAlphabetの企業価値は約75兆円(6,845億ドル)だ。
http://247wallst.com/technology-3/2016/06/08/how-youtube-may-now-be-worth-90-billion-or-more-on-a-standalone-basis/

このYouTube TV登場に至った米国の巨大マーケティング界隈の変化は、日本においての明日の事としてもヒントがある。日本のメディア側にとってもマーケター(広告主)側にとっても、視聴者側は今後「それなりに信用できるコンテンツを見るには、メディア側に視聴登録を行うこと」が自然となる。視聴者の意識は徐々に「有料購読しないと、価値ある情報にはアクセスできない」、同時に「無料の情報には大きなバイアスがある」と考える層が生まれている。逆に有料を受け入れない層(たとえば低所得層)との2層に別れてくる。これはマイクロペイメントの進化も手伝って、コンテンツ提供側やメディア側には追い風であり、ブランド側も自身がメディアと自覚する必要性が唱えられるのも、価値ある情報=有料の流れがあるからだ。

本章では、米国での「YouTube TV」がどんなものなのか、身近な例から比較説明する。これは米国でのメディア事業側のトレンド参考資料として以上に、日本における「ブランドのメディア化」の構築作業において、大いに意味在る先行指標となる事例と考える。MAD MAN読者自身がメディア事業主になった気分でYouTube TVの未来を占ってみてほしい。

■「Apple TV」「Amazon Fire TV」「Chrome Cast」は「YouTube TV」とは別物


図2: 映像ストリーミングのデバイスたち。TVと名が付くが、TVの映像をストリーミング転送するツールだ。左からApple TV、Amazon Fire TV、Google Chromecast、ROKU 下段のアプリアイコンはFire TVで標準搭載されているアプリ例。(出典:各社)

MAD MAN読者は承知のこととはいえ、まずは確認だ。「YouTube TV」と同じくTVと名の付く「Apple TV」や、「Amazon Fire TV」、そして同じGoogleの「Chrome Cast(TV)」らのボックスやスティックの物理商品は、YouTube TVとは区別すべき「別物」のTV周辺器具である。
「Apple TV」「Amazon Fire TV」や「Google Chrome Cast」は「TV」というネーミングはつくが、1回購入のハード(ツール)だ。上記3つの「ハード」は、NetflixやHuluなどのサービスが視聴可能だが、それらのクラウド・サービスのログイン・アカウントを個人が別途契約を持つ前提での「視聴可能」だ。これらのツールは「50インチのテレビモニターに、購読しているオンラインコンテンツをストリーミング(ミラーリング)によって投影させる、転送させるだけのツール」である。それに対して本題の「YouTube TV」はクラウド・サービスの有料視聴コンテンツを月額受信(課金)するモデルで、ライブで流れているオンラインの映像コンテンツそのものを買う(提供する)「サービス契約」の違いである。

■YouTube TVの競合サービスとは

米国で立ち上がったテレビ番組のストリーミング視聴サービスには「Sling TV」、「DirecTV Now」、「PlayStation Vue」、「Hulu Live TV」らが存在し、「YouTube TV」は最後発だ(図3)。

図3: 米国におけるテレビの生放送が見られるストリーミングサービス。月額契約で約4,500円~5,000円だ。

これらのストリーミングTVサービスの特徴は、

  • 40~50チャンネルの主要局が放映する全ての番組を網羅(ライブのニュース、スポーツを含む)
  • Wi-Fi環境でアプリのある複数のデバイスで視聴可能で録画(後日視聴)が可能

というサービスだ。この前提で競合する日本での現状サービスを洗い出してみると、「未だ登場していない」という状態だ。

無理やり競合として名前を挙げれば『TVer、Netflixジャパン、Huluジャパン、サッカーのDAZNを組み込んだd-TV、AmazonのPrime Video(VOD)他』等が複数挙げられる。

各テレビ局を束ねたストリーミング視聴サービスとしての対抗馬はTVerだが、(技術的に可能であるのに)まだまだ制限が多すぎる。発足当時の意義を推し伏せてしまい、参加局の全番組の1割程の限定番組しか放映せず、しかも1週間だけ分に限っている。利用者としても機能不足は誰しも感じる所だろう。Netflixジャパンがスゴイとは言え、テレビ局が持つような即時のニュース、テレビドラマ番組、野球やサッカー等のスポーツ、が見られる訳ではない。d-TVも同様だ。

この日本のTVストリーミング市場が米国より遅れをとっていることは、視聴者目線ではむしろこれからの楽しみな変化が期待される。未だ巨人AppleもAmazonもこの「リネア(生)放送のテレビ」を見せるビジネスには参入していないからだ。Alphabet(Google)が後発ながらも参入したこの分野に、必ず入ってくるであろうAppleやAmazonがどう反応するかを観察できる状況である。

一方、日本の放送局目線では、決断の時期が迫っており、すでにYouTube側とのすり合わせも始まっているだろう。TVerをどうするか、という課題だけに留まらない。実はYouTube TVはあえてチャンネル局のTurner(CNNを持つ)を視聴チャンネルに入れていない。日本でおきかえて例えれば、似たり寄ったりの「日テレ、テレ朝、フジ、TBS」の中から1社くらいYouTubeから漏れていても「生活に影響ない」チャンネルがある、という判断だ。

例えば、・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.32にて

 

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